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ベーシック上場申請書を読む|「4期連続赤字」から黒字転換した会社が、なぜ今このタイミングで上場するのか

21年間で50超の事業を立ち上げ、生き残った2つのSaaSプロダクトが4期連続赤字から黒字転換。売上総利益率77%、サブスク比率78%という構造の裏で、繰越欠損金の解消タイミングとVC保有比率23.1%が上場後の株価に与える影響を解剖する。

はじめに——「黒字転換」という言葉の重さ

2004年創業。21年。 この会社は21年間、50を超える事業を立ち上げた。 その多くが消えた。残ったのは2つだ。 「ferret One」——BtoBマーケティングのワークフローツール。 「formrun」——フォームを起点にした業務管理ツール。 この2つで2025年、ついに黒字転換する。

第三四半期累計(2025年1〜9月)の数字はこうだ。 売上高16.8億円、 営業利益1.8億円、 四半期純利益2.7億円。 4期連続赤字だった会社が、突然、利益を出す機械に変わった。

有報を読んで最初に感じたのはこれだ。「この黒字は、本物の黒字か。それとも一時的な現象か」 答えを出すために、数字を全部解剖した。

第一章——「5年間の軌跡」が語る転換点

ベーシックの5年間の経営成績はこうだ。 2020年12月期の売上高が16.0億円、経常損失2.3億円。 2021年12月期が9.6億円、経常損失6.4億円。 2022年12月期が12.4億円、経常損失8.2億円。 2023年12月期が15.6億円、経常損失4.4億円。 2024年12月期が18.2億円、経常損失2.0億円。

読めば分かる。赤字が毎年縮小している。これは「じりじりと正解に近づいていく会社」の軌跡だ。

売上高の推移で一つ注目すべき点がある。2021年12月期に売上が9.6億円まで急落している。なぜか。比較メディア事業を売却したからだ。2020年12月期の当期純利益8.6億円は「比較メディア事業の売却益」だ。

つまり2020年の黒字は事業売却の特益だった。実態は「非中核事業を切り離し、コアに絞った結果、売上が一時的に激減した」だ。この判断が、5年後の黒字転換の種を撒いた。

第二章——「ferret One」と「formrun」の構造を解剖する

ベーシックの売上の約78%はサブスクリプション型だ。2024年12月期のサブスクリプション型売上が14.2億円。ソリューション型(初期導入・コンサルティング)が4.1億円。

なぜサブスク比率が高いことが重要か。サブスクは「積み上がる収益」だ。今月の顧客が来月も払い続ける。解約がなければ、昨月の売上が今月のベースラインになる。これをMRR(月次経常収益)という。

「ferret One」は現在500社超の顧客に使われている。「formrun」は5,000社超の有料顧客と累計50万ユーザー。ferret Oneとformrunのターゲットはまったく異なる。ferret OneはBtoBマーケターが主な顧客で、単価が高い顧客を少数精鋭で獲得する「ハイタッチ」モデルだ。formrunは5,000社という圧倒的な顧客数から分かるように、中小〜中堅の幅広い業種に使われる「プロダクトレッドグロース」に近い戦略だ。

第三章——「黒字転換」の本当の理由

2025年中間期に黒字転換した理由は何か。有報には正直に書いてある。 「事業成長を人の数で解決しないために一人一人の生産性を向上させ、人件費を中心に費用の積み上がりが抑制されました」

これが答えだ。売上が積み上がる一方で、コストを増やさなかった。2024年12月期の販管費は15.9億円。第三四半期累計(9ヶ月)の販管費は11.4億円。年換算すると約15.2億円になる計算だ。売上が伸びているのに、費用がほとんど増えていない。これが「レバレッジが効き始めた」ということだ。

ベーシックの売上総利益率は約77%(2024年12月期)だ。この水準は、ソフトウェア会社として高い。売上が1,000円増えると、750円が粗利になる構造だ。

第四章——「自社でAIを使い倒す」という差別化

有報の中に、他のSaaS企業ではあまり見ない記述がある。 「社内アンケートでは従業員の100%がAIを活用しており、約70%が自ら業務効率化のための自動ワークフローを構築しております」 そして「直近1年間で一人当たり売上高は約20%改善した」。

2024年12月期末の従業員数は108人。売上高は18.2億円。一人当たり売上高は約1,686万円だ。第22期第三四半期累計で、9ヶ月の売上が16.8億円、従業員数は111人(2026年1月末現在)。年換算すると一人当たり売上高は約2,000万円超になる計算だ。

「自社ツールで自社を効率化する」——これは製品の信頼性の証明でもある。「ferret One」で自社のマーケティングを回し、「formrun」で自社の問い合わせを管理する。使ってみた。効果が出た。その知見をプロダクトに反映する。この「自社実験→プロダクト改善→顧客への価値提供」というサイクルが、ベーシックの開発文化の核だ。

ここまで読んだあなたへ。ベーシックという会社の「転換の構造」が見えた。21年間で50事業を立ち上げ、2つに絞り込み、4期連続赤字を経て、2025年に黒字転換する。売上77%をサブスクが占め、MRRが積み上がり、人を増やさずに利益が出る構造になった。

しかしここから、本当に重要な問いが始まる。

「4期連続赤字で積み上がった繰越欠損金は、黒字化した瞬間に税金という形で利益を食う。この影響はどれほどか」。 「ferret OneとformrunのMRRチャーン(解約率)は実際いくらで、それは業界水準と比べて何を意味するか」。 「2026年1月にリリースしたworkrunとAIBOWは、既存顧客基盤への『コンパウンド戦略』として本当に機能するか」。 そして最大の問い——「VCが発行済株式の23.1%を保有している。上場後の売り圧力はどれほど株価に影響するか」。

有料パートでは、この4つを数字で完全解剖する。

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