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【LiNKX IPO分析】1人あたり2,300万円を稼ぐエンジニア集団の正体と、集中リスクが「現実になる日」

売上高前年比66%増、営業利益同144%増、利益率24.5%——成長しながら利益率が上がる異常な軌跡。エンジニア1人あたり年間売上高約2,300万円という設計の裏で、北國銀行依存度49.5%という集中リスクが「現実になる日」を解剖する。

はじめに——「名前を変えた会社」に、なぜ今注目するのか

2026年5月、ひとつのIT企業が東京証券取引所グロース市場への上場を申請した。 LiNKX株式会社。 売上高13.7億円、従業員87人、創業2020年。

この会社を初めて知る人のほとんどが、こう感じるはずだ。「どこかで聞いたような話だ」と。

金融機関向けのシステム開発支援。クラウドネイティブなエンジニア組織。DX推進の波に乗る中小IT企業。確かにそう見える。

しかし有報を読み込むと、この会社には「構造的な異常値」がある。

売上高が前年比66%増。営業利益が同144%増。しかも利益率24.5%を維持したまま、このスピードで拡大している。

普通のIT企業は、成長するにつれて利益率が落ちる。人を増やすと、一人あたり売上が下がる。営業や管理コストがかさむ。LiNKXはそうなっていない。なぜか。

この問いの答えが、この会社の「本当の姿」だ。

第一章——5年間の数字が語る「異常な成長曲線」

まず骨格をつかむ。

売上高の推移はこうだ。 2021年6月期が2.98億円。 2022年6月期が5.37億円。 2023年6月期が6.72億円。 2024年6月期が8.27億円。 2025年6月期が13.74億円。

4年間で約4.6倍だ。

しかし売上の伸びより、利益の変化の方が重要だ。

経常損益の推移を見る。 2021年6月期はマイナス0.97億円の赤字。 2022年6月期はマイナス0.20億円の赤字。 2023年6月期はプラス0.56億円で初黒字転換。 2024年6月期はプラス1.38億円。 2025年6月期はプラス3.36億円。

黒字転換から2年で、利益が6倍になった。

さらに驚くのが営業利益率だ。 2024年6月期:16.7% 2025年6月期:24.5%

成長しながら、利益率が上がっている。

第二章——「ハイエンド・エンジニア」という経営指標の正体

この会社が他のIT企業と違う理由が、経営指標の設計にある。

LiNKXは、従業員数ではなく「ハイエンド・エンジニア数」を最重要KPIとして開示している。

ハイエンド・エンジニアとは、クラウドネイティブで世界標準のシステム設計ができる技術と、AIを高次元で活用できる技術を持ち、かつ社内の厳格なコーディングテストを通過した、顧客プロジェクトに直接アサインされる人員だ。

全従業員87人のうち、エンジニアが8割超。そのうち、このハイエンド・エンジニアが何人いるか。 2024年6月期末:45人 2025年6月期末:72人 2026年3月末:86人

そして、もう一つのKPIが「1名あたり年間平均売上高」だ。 2024年6月期:2,357万円 2025年6月期:2,294万円

ほぼ横ばいだ。

「頭数を増やせば売上が増える」という単純な構造ではない。「一人が生み出す価値を維持しながら、その人数を増やす」という設計だ。

エンジニアを1人採用すれば、約2,300万円の売上が追加される。利益率24.5%を掛ければ、約560万円の営業利益が追加される計算だ。これは「採用する意思決定が、そのまま利益の意思決定になる」構造だ。

第三章——「北國銀行49.5%」というリスクの読み方

しかし、ここで立ち止まらなければならない数字がある。

2025年6月期の売上高のうち、株式会社北國銀行との取引が49.5%を占めている。上位2社合計で71.6%だ。

まず「なぜ北國銀行がこれほどLiNKXに依存しているのか」を理解する必要がある。北國銀行は、地方銀行として異例の次世代勘定系システム刷新を進めている。勘定系とは、銀行の中枢中の中枢だ。預金、融資、為替——全ての取引を処理するシステムで、24時間365日止まることが許されない。

このシステムのモダナイゼーションは、大手SIerでさえ慎重になる領域だ。LiNKXはそこに深く入り込み、開発パートナーとして機能している。つまりこの関係は、「一取引先への依存」というより「ミッション・クリティカルなインフラへの埋め込み」と読む方が正確だ。

ただし、「埋め込まれていること」は参入障壁であると同時に、退出困難なリスクでもある。プロジェクトが縮小すれば、売上の崩落は一瞬で起きる。

このリスクを直視した上で、LiNKXがどう手を打っているかを確認する。2025年4月、ふくおかフィナンシャルグループとの資本業務提携が発表された。2026年5月には、Kyndrylジャパンとのパートナーシップ締結。「北國銀行の次」を見据えた布石は、着実に打たれている。

第四章——「フロー型97.9%」が示す構造の脆弱性と可能性

2025年6月期の売上構造を確認する。 フロー型収入(プロジェクト開発支援):97.9% ストック型収入(保守・運用、SaaS等):2.1%

フロー型収入の問題は何か。プロジェクトが終われば収入が止まる。次のプロジェクトを常に獲得し続けなければ、売上が落ちる。

しかし見方を変えると、別の景色がある。勘定系システムのプロジェクトは、1件あたりの期間が数年単位になる。開発が終わっても、保守・運用として継続関係が続く。顧客のシステムに深く食い込んでいるため、他社への乗り換えが極めて困難だ。形式的には「フロー型」でも、実態は「長期継続型」に近い。

有報では「フロー型収入をストック型収入へとつなげる」と明記されている。自社プロダクト「BX Connect」(APIゲートウェイシステム)の開発も進んでいる。

第五章——「外国人40%」という最強の採用戦略

もう一つ、見逃してはいけない構造がある。

LiNKXのエンジニアの半数以上が、欧米やアジア等の海外出身者だ。2026年4月時点での外国人従業員比率は約40%。世界20カ国以上から採用している。

日本のIT企業が「優秀なエンジニアを確保できない」と嘆く中、LiNKXはグローバルな採用市場を活用している。日本在住の外国人エンジニアは、大手SIerやGAFAに比べると、まだ競合が少ない。しかも、ハイエンドな技術力を持ちながら、日本の大手企業より低い給与水準で採用できるケースがある。

クラウドネイティブの技術標準はグローバルで決まっている。英語を母語とするエンジニアは、最新の技術情報へのアクセスが早い。「世界水準の技術を、日本の金融機関に届ける」というLiNKXのバリューチェーンは、この採用戦略によって成立している。

ただし、これはリスクでもある。在留資格の変更や、出入国管理法の改正によって、この採用戦略が制約される可能性がある。有報にも「影響度:大」のリスクとして明記されている。

ここまで読んだあなたへ。

売上66%増、利益率24.5%、1人あたり2,300万円の生産性。「ハイエンド・エンジニア」という希少資源で成長する、珍しい構造が見えたはずだ。

しかし、本当に重要な問いは、ここからだ。

北國銀行依存49.5%という集中リスクは、どのシナリオで顕在化するのか。 第6期(2026年6月期)の第3四半期で、売上はすでに前期通期と並ぶ水準に達した——これは何を意味するのか。 キャッシュフローの構造は「本物の稼ぐ力」を示しているのか、それとも歪みがあるのか。 自己資本比率84%という財務の強さと、有利子負債ゼロの意味は何か。 そして——この会社は「AI代替リスク」に対して、本当に耐性があるのか。

有料パートでは、これらを全て数字で解剖する。LiNKXがIPO後に「化ける会社」か「止まる会社」かを判断するための、唯一の論拠を提示する。

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