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株式会社ビーエイブル(旧エイブル)上場申請解剖|「福島第一原発の廃炉」で稼ぐ会社が、東証スタンダードに上場する意味

売上の54%、実質70%を東京電力に依存するこの会社は、福島第一原発の廃炉という「40年保証された事業」を武器に上場申請した。だが有利子負債は9ヶ月でほぼ倍増し、営業CFはマイナスに転落している。

はじめに——この会社の何が、信じられないか

2026年6月、福島県双葉郡大熊町に本店を置く一社が、東京証券取引所への上場を申請した。

株式会社ビーエイブル。旧社名、株式会社エイブル。

創業1991年、もとは原子力発電所の設備メンテナンス会社だった。

読み進めて、手が止まった箇所がある。

この会社の売上の半分以上は、東京電力ホールディングスから来ている。しかもその中核事業は、福島第一原子力発電所の廃炉作業そのものだ。

つまりこの会社は、日本の産業史上最悪の原発事故の「後始末」を、35年かけて主力事業に育て、その事業をもって株式市場に出てくる。

これは不謹慎な話ではない。廃炉は誰かがやらなければならない仕事であり、地元企業がそれを担うことには社会的な意義がある。

だが投資家として見たとき、問うべきことがある。

国家的な悲劇の後始末が、あと何年、どれだけの規模で続くのか。そしてその継続を、企業の「堀」と呼んでいいのか。

数字を読むと、この問いへの答えが、思っていたより明確に浮かび上がってくる。

第一章——原発事故から生まれた会社の35年

ビーエイブルの前身、東設エンジニアリングは1991年、福島県双葉郡富岡町で生まれた。原子力発電所の設備保守を請け負う、ごく普通の地元プラント業者だった。

転機は2011年3月11日。

東日本大震災と福島第一原発事故。この会社は震災直後から事故収束作業に従事し、その後も継続して廃炉作業を担ってきた。2020年には遠隔操作ロボットによる排気筒解体で内閣総理大臣賞まで受賞している。

震災前は「原発の保守業者」だった会社が、震災後は「廃炉のプロフェッショナル」に変わった。

この転換が、今の収益構造をつくった。

工事事業を中核に、再生可能エネルギー事業、そして介護・料飲などその他事業。三本柱と言えば聞こえはいいが、実態を数字で見ると、この会社が何で立っているかは一つしかない。

第二章——売上の54%、実質70%が一社に依存する構造

2025年7月期の売上高は89.8億円。前年比3.5%増。

セグメント別に見ると、工事事業が78.5億円で全体の87%を占め、セグメント利益は11.4億円。再生可能エネルギー事業は9.3億円で前年比36.5%減、利益はほぼゼロ。その他事業は2.0億円で、9,800万円の損失。

つまりこの会社の収益は、実質ほぼ工事事業一本足だ。

そして工事事業の相手先を見ると、東京電力ホールディングスへの直接売上が売上高全体の53.9%。グループ企業まで含めると、その比率は70%に達する。

これを「特定顧客への依存リスク」と呼ぶ人もいる。だが視点を変えれば、これは「40年保証された発注元」でもある。

福島第一原発の廃炉は、政府が定めた中長期ロードマップで「完了目標2041年〜2051年」と明記されている。廃炉費用の総額は約8兆円、対象期間は約30〜40年。これは民間企業が普通に手に入れられる受注確度ではない。

依存であり、同時に、他の誰にも壊せない収益基盤でもある。この二重の意味を、どう受け止めるか。

第三章——利益は減っているのに、成長投資は加速している

数字の表面だけを見ると、この会社は減速している。

経常利益は 2023年7月期の11.3億円をピークに、 2024年7月期7.7億円、 2025年7月期6.6億円と2期連続で減っている。ROEも12.7%→12.1%→9.8%と下がり続けている。

だが利益が減った理由を見ると、話は変わる。

人材への投資、開発体制の強化、システム改善。会社側はこれを「将来の持続的成長に向けた戦略的投資」と説明している。

そして2026年に入ってから、投資の規模が一段跳ね上がった。

福島県双葉町に建設中の「beABLE研究開発センター」は投資総額22億円。千葉県富津市の新工場は12億円。合計34億円規模の設備投資が、この1年で一気に動いている。

この投資をどう評価するか。それが、この会社を理解する分水嶺になる。

ここまで読んで、あなたはこの会社の「表の顔」を掴んだはずだ。

原発事故から生まれ、廃炉という40年保証の事業を持つ地元企業。成長投資を加速させながら、東京電力への依存度は70%。

だが、この会社の本当の姿は、キャッシュフロー計算書と有利子負債の推移を見なければ分からない。

有価証券報告書を読み進めると、ある数字にぶつかる。

この1年で、有利子負債が「倍増」している。

2025年7月末に24億円だった借入金及びリース債務の残高が、2026年4月末には49.5億円になっている。わずか9ヶ月で、借金がほぼ2倍になった。

同時に、営業活動によるキャッシュ・フローは前期の18.3億円の収入から、直近期はマイナス3.1億円の支出に転落している。

利益は出ている。だが現金は、出ていくスピードの方が速い。

この歪みの正体を知ったとき、あなたはこの会社の上場タイミングの意味を、まったく違う角度から理解することになる。

続きでは、この現金の歪みの構造、東京電力依存を「堀」と呼べるかどうかの検証、そして上場直前に行われた「1株を5株にする」株式分割という一つの数字操作の意味を、根拠から解剖する。

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