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「タクシーアプリ」で片付けるな——GO IPO分析|46億円の利益改善を生んだ収益構造と、誰も言わない二大株主リスク

5期連続赤字から一転、前期比46億円の経常利益改善。アプリ配車利用率はいまだ26%で「市場の余白」が巨大に残る一方、Waymoとの自動運転提携が示す次の一手と、日本交通25.7%・DeNA25.7%という二大株主構造のリスクを解剖する。

はじめに——「タクシーアプリ」という言葉を、今すぐ捨ててほしい

2026年5月14日、GO株式会社が東京証券取引所への新規上場申請書を提出した。 売上高314億円、従業員622名、設立2020年。 「移動で人を幸せに。」 このミッションを掲げ、タクシーアプリ「GO」を軸にモビリティとテクノロジーを掛け合わせた事業を展開する会社だ。 読み始めたとき、最初に感じたのはこれだ。 「この会社は、一度死にかけてから生き返った」

5期連続赤字。2024年5月期の経常損失は19.9億円。それが2025年5月期には経常利益26.3億円に転換した。 黒字転換の規模が異常だ。前期比で46億円の改善。 何がそれを可能にしたのか。そして、この黒字は本物か一時的なものか。 有報を読み解くと、「タクシーアプリ」という言葉では到底収まらない、この会社の本当の構造が見えてくる。

第一章——5年間の成長を数字で読む

まず骨格を掴む。単体売上高の推移はこうだ。 2021年5月期:51億円 2022年5月期:84億円 2023年5月期:145億円 2024年5月期:217億円 2025年5月期:290億円 4年間で約5.7倍。年平均成長率は約54%だ。

しかし5年間ずっと赤字だった。 2021年5月期の経常損失:123億円 2022年5月期の経常損失:109億円 2023年5月期の経常損失:84億円 2024年5月期の経常損失:27億円 2025年5月期の経常利益:10.7億円(単体)

損失が毎年縮小し、2025年5月期についにトントン以上になった。 有報に答えが書いてある。「第48期(2024年5月期)については、顧客基盤の拡大を目的とした大規模なマーケティング施策を積極的に展開したことにより、広告宣伝費が増加した結果、経常損失を計上」。

意図的に赤字を掘り続けた。ユーザーとタクシー事業者の両側を獲得するために、巨額の先行投資をした。

連結では2025年5月期に売上314億円、経常利益26.3億円、当期純利益20億円を達成した。

第二章——収益構造の解剖「二つの収益エンジン」

GOの収益構造を理解するには、「アプリ配車」と「タクシー関連サービス」の二本柱を知る必要がある。

2025年5月期のセグメント別売上はこうだ。 アプリ配車:135.8億円(売上構成比43.2%) タクシー関連サービス:136.7億円(売上構成比43.5%) その他:41.8億円(売上構成比13.3%)

アプリ配車の仕組みはシンプルだ。ユーザーがGOアプリでタクシーを呼び、乗車するごとに「1実車当たり平均売上高141円」の手数料収入が発生する。2025年5月期の実車数は年間9,631万回。

タクシー関連サービスは、決済(GO Pay)の手数料、タクシー車内サイネージ広告(TOKYO PRIME)、車載端末の販売・リース、タクシーチケットの発行・管理だ。重要なのは、タクシー関連サービスはアプリ配車の利用が増えるほど自然に拡大する構造だということだ。GO Payの決済手数料は乗車回数に比例する。TOKYO PRIMEの広告収入は配車台数の増加で視聴回数が増える。つまりアプリ配車が成長すれば、タクシー関連サービスも自動的に成長する設計になっている。

第三章——「26%」という数字に隠された巨大な余白

有報の中で最も重要な数字がこれだ。 「パートナータクシー事業者のアプリ配車の利用率:26%(2025年5月期時点)」

GOが利用可能なタクシーは現在約85,000台。しかしそのうちGOアプリ経由で実際に配車しているのは全実車数の26%に過ぎない。残り74%は、まだストリートで手を挙げる乗客や、電話配車、他社アプリを使っている。

これは「問題」ではない。これは「市場の余白」だ。

東京でのGOアプリ経由実車数の推移を見ると、2022年5月期から2025年5月期の3年間で実車数は約3倍になった。それでもまだ26%だ。仮にアプリ配車利用率が26%から40%に上昇したとすれば、実車数は約1.5倍になる。売上への影響は試算で200億円超の追加収益ポテンシャルだ。

さらに重要な数字がある。第50期第3四半期累計(2025年6〜2026年2月)の売上はすでに300.9億円。前期通期314億円に9ヶ月で到達している。1実車当たり平均売上高は163円と、前期の141円から急速に上昇している。

第四章——Waymoとの戦略的パートナーシップを読む

2024年12月、GOはAlphabet Inc.傘下のWaymo社及び日本交通株式会社と戦略的パートナーシップを締結した。2025年4月からWaymo車両の東京での走行を開始している。

表面的には「自動運転タクシーの実証実験」だ。しかし戦略的に読むと、これはGOがモビリティプラットフォームとして自動運転時代に生き残るための「布石」だ。

現在のGOのビジネスモデルは「人間ドライバーがいるタクシーを配車する」ことで成立している。将来、自動運転タクシーが普及したとき、ドライバー不足の制約がなくなり供給量が爆発的に増える。このとき「配車プラットフォーム」として先行しているGOは、自動運転車両の配車ネットワークとしても機能できる。

ただし——この実証実験にかかるコストは「その他」セグメントに計上されており、現状赤字だ。有報にも「自動運転費用」を調整後EBITDAの計算で除外していることが明記されている。これは投資なのか、コストなのか。

ここまで読んだあなたは、GOという会社の「表面の強さ」を理解した。

5期連続赤字からの黒字転換、26%という巨大な市場余白、Waymoとの未来への布石——数字の表面は見えた。

だが、本当に重要な問いはここからだ。

「繰越欠損金440億円」という隠れた武器——なぜこれが財務上の「神風」になるのか。 売上債権・未収入金増加の「正体」——GO Pay決済の構造的なキャッシュフローの歪み。 日本交通ホールディングス25.7%・DeNA25.7%という「二大株主構造のリスク」。 そして最も重要な問い——GOを「タクシーアプリ運営会社」として評価するのか、「日本唯一のモビリティインフラ」として評価するのか。

この続きを読んだとき、あなたはGOのIPOを他の投資家より一段深く理解した状態で判断できるはずだ。

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