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「堅実」の正体を暴く——株式会社システムエグゼ IPO決算書 徹底解読

28年間生き残ったSIerの秘密は「一次請け比率9割」という業界異例の直接取引構造。自己資本比率70%・現金30億円という財務健全性の裏で、2025年3月期の経常利益が20%減った理由とROE低下の意味を数字で解剖する。

はじめに——なぜこの会社を読むのか

2026年3月、一つのIT企業が東京証券取引所に上場申請した。株式会社システムエグゼ。売上116億円、従業員877人、創業1998年。

派手さはない。超高成長でもない。話題のAIスタートアップでもない。だが、この会社の有価証券報告書を読んだとき、一つの問いが浮かんだ。

「なぜこの会社は、28年間生き残り続けたのか」

SIer(システムインテグレーター)という業界は、本来「下請けの連鎖」で成り立っている。上から仕事をもらい、下に流す。マージンで生きる、構造的に弱い立場だ。システムエグゼは、その構造に抗い続けた。売上の約9割がエンドユーザーとの「一次請け」直接取引だ。これは、同業他社と比べても異例の高さだ。

なぜそれができたのか。何が強みで、何がリスクなのか。数字を解剖していく。

第一章——5年間の成長を数字で読む

まず、骨格を掴む。単体の売上高推移を見ると、2021年3月期の84.6億円から2025年3月期の115.3億円へ、4年間で36%増だ。年平均成長率に換算すると約8%。派手ではないが、着実だ。

ここで重要なのは「どう成長したか」だ。従業員数を見る。2021年3月期が615人、2025年3月期が651人。4年間で36人しか増えていない。増加率6%だ。一方、売上は36%増えた。

一人当たり売上高は、2021年が約1,375万円から2025年が約1,771万円へ、約29%上昇している。同じ人数で、より多くの売上を生み出している。

経常利益の推移も見る。2021年3月期が2.6億円、2025年3月期が6.1億円。4年で2.4倍になった。しかし——ここに一つの転換点がある。2024年3月期(第27期)の経常利益は7.6億円だったのに、2025年3月期(第28期)は6.1億円に落ちた。約20%の減益だ。売上は伸びたのに、利益は下がった。これは何を意味するのか。

第二章——「自己資本比率70%」の意味するもの

財務の健全性を確認する。自己資本比率は、2021年の37%から2025年の69%へ、急速に改善した。無借金経営に近い水準だ。連結ベースの総資産75.4億円に対して、純資産52.9億円。現金及び現金同等物も30.2億円を保有している。

受注型ビジネスは、売上の波が大きい。大型案件が一つ終わると、次の案件が決まるまで収益が急落するリスクがある。だから手元流動性の高さは「生存能力」の証明だ。

一方で、この財務健全性には裏側がある。ROE(自己資本利益率)を見ると、2021年の6.6%から2023年の24.4%に急上昇した後、2025年には9.3%まで落ちている。ROEが低下するのは、分子(利益)が減るか、分母(自己資本)が増えるかのどちらかだ。今回は両方が起きている。利益が減り、自己資本が積み上がった。

ただし、だ。IPO直前に自己資本を積み上げ、財務体質を磨き上げるのは、上場準備の定石でもある。上場後に成長投資を加速させ、ROEを回復させる——という戦略の下準備とも読める。

第三章——「一次請け9割」という異常値の正体

システムエグゼの最大の差別化要因を、もう一度深掘りする。一次請け比率が約9割——これが何を意味するか、業界の文脈で説明する。

日本のIT業界の多重下請け構造はこうなっている。元請けSIer(NTTデータ、富士通、NECなど大手)が案件を受注し、二次請け・三次請けの中小SIerに開発を外注する。間に入る会社が増えるほど、末端に残るマージンは薄くなる。また、顧客との直接関係がないため、「次の仕事」の獲得が難しい。

システムエグゼはここに徹底的に抗った。有報を読むと、業種特化の深さが見える。不動産業、保険業、製造業——これらの業界の業務知識を28年かけて蓄積した。「ITの会社」ではなく「不動産業務を知っているITの会社」として顧客に認識されている。

業務知識がある会社は、要件定義から保守・運用まで一気通貫でできる。一気通貫ができる会社は、顧客が乗り換えにくい。乗り換えにくい顧客は、長期契約に繋がる。自社パッケージ製品「EXEXシリーズ」も、この業種特化の延長線上にある。パッケージ製品は、受注開発より収益性が高く、スケールする。

ここまで読んで、あなたは何かに気づいただろうか。システムエグゼは「普通のSIer」ではない。しかし同時に、無視できない「問い」がいくつか浮かんでいるはずだ。

利益が減った本当の理由は何か。キャッシュフローに見える「異変」は何を示しているのか。IPOで得た資金を、この会社はどこに向けようとしているのか。そして、SIerというビジネスモデルはAI時代に生き残れるのか。

この問いへの答えが、投資家としての判断を分ける。続きでは、キャッシュフロー計算書の「異変」、人件費と利益率の関係、AIへの対応戦略、そしてこの会社の本質的なリスクと可能性を、数字を使いながら徹底的に解読する。

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