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26/4/7IPO ヒトトヒトホールディングス 「野球場の警備員さん」が東証に上場する。

プロ野球球場の観客案内から始まり50年、12球団中8球団の本拠地を受託。常時1万2000人のアルバイトプールという他社が真似できない武器で、今期営業利益は前年比53.8%増。三井不動産との25年関係と、バランスシートに眠る「のれん59億円」の爆弾を解剖する。

この記事の3つの学び

  • 50年かけてプロ野球12球団中8球団・Jリーグ7チーム・Bリーグ8チームの運営業務を受託し、常時1万2000人超のアルバイトプールという他社が短期間で構築できない「人財インフラ」を武器にしている
  • 今期(2025年4〜12月の9ヶ月間)は売上収益が前年同期比21.7%増に対し営業利益は53.8%増と、固定費が変わらないまま売上が伸びる「利益率が加速する構造」に入っている
  • 三井ショッピングパーク全国52施設のうち26施設(ちょうど半分)の警備業務を25年間受託しているが、2019年のLBO買収に伴うのれん59億円(総資産の53%)と借入金56億円という財務リスクを抱えている

先に結論を言います。

この会社の決算書を読んで、最初に思ったのは「なんて地味な会社だろう」でした。

次に読み進めて思ったのは「なんて面白い会社だろう」でした。

そして最後に読み終えて思ったのは「これは、日本社会の縮図だ」でした。

ヒトトヒトホールディングス株式会社。

2026年3月、東証スタンダード市場への上場を申請した会社です。

何をしているのか、一言で言います。プロ野球の球場に来た観客の案内をする。商業施設を警備する。病院の受付を代行する。スマホ販売店のスタッフを派遣する。そういう仕事です。

華やかさはゼロです。テクノロジーとも縁遠い。AIとかロボットとか、そういう話は出てきません。

でも、この会社の数字を見て、私は椅子から立ち上がりそうになりました。今期(2025年4月〜12月の9ヶ月間)の営業利益が、前年同期比で53.8%増。売上も21.7%増。

地味な業界で、地味な仕事をしながら、利益がこの速度で伸びている。なぜか。どうやって稼いでいるのか。全部、話します。

この会社が50年かけて積み上げてきたもの

1974年。東京・明治神宮野球場で試合後の清掃をする小さな会社として始まりました。ヤクルトスワローズの主催試合。試合が終わったら観客席のゴミを拾う。それだけです。

それから50年。2026年現在、プロ野球12球団中8球団の本拠地球場で業務を受託しています。東京ヤクルトスワローズ、横浜DeNAベイスターズ、東北楽天ゴールデンイーグルス、福岡ソフトバンクホークス、北海道日本ハムファイターズ、埼玉西武ライオンズ、阪神タイガース、オリックス・バファローズ。

野球だけではありません。Jリーグは7チーム。Bリーグ(バスケ)は8チーム。女子ゴルフツアーは25大会。それに花火大会、音楽ライブ、マラソン……。

「1万人のアルバイト」という、誰も真似できない武器

プロ野球の球場運営で一番難しいのは何だと思いますか?試合のある日は2〜3万人の観客が押し寄せます。でも翌日は誰も来ない。翌週の平日も誰も来ない。「今日だけ500人のスタッフが必要だけど、明日はゼロ人」という世界です。

ヒトトヒトホールディングスは、この問題を50年かけて解決しました。答えは「スポーツ好きの学生アルバイトを常時1万人以上抱えること」です。2025年11月末時点で、このグループと雇用契約を結んでいるアルバイトは1万2000人を超えています。

この人たちは「プロ野球の球場で働きたい」「甲子園でバイトしたい」という動機で集まっています。だから賃金水準が少し低くても集まる。離職率も比較的低い。

しかもこの「1万人のプール」があるから、ゴルフトーナメントの運営も、コンサートの警備も、花火大会の整理案内も、ひとつの組織で全部できる。「この規模の人財プールを一から作ること」は、どんな大企業でも5年や10年ではできません。50年間のブランドと信頼関係があって初めて成立する仕組みです。

5年間の成績表を正直に読む

連結売上収益の推移(IFRSベース)は、2024年3月期が156億円、2025年3月期が168億円。前年比7.7%増です。

それより注目すべきは利益の伸びです。2024年3月期の親会社帰属当期利益は1億9千万円でした。2025年3月期は3億4千万円。

なぜ前の年が低かったのか。この会社はLBO(レバレッジド・バイアウト)という手法で2019年に買収されたため、巨額の借入金を抱えています。2025年3月末時点で56億円。この借入の利息が長年、利益を押し下げてきました。

ただし、今期(2025年4〜12月の9ヶ月間)の数字を見ると、様相が変わってきています。売上収益158億円(前年同期比21.7%増)。営業利益12億2千万円(前年同期比53.8%増)。

売上が21%増えているのに、利益は54%増えている。これは「売れば売るほど利益率が上がる構造」になっていることを示しています。固定費(本社コスト、管理費など)は変わらないまま売上が増えているから、利益が加速度的に伸びる。

三井不動産という「隠れた大動脈」

三井ショッピングパークの警備業務を受託している施設の数を数えてみると……全国52施設のうち26施設。ちょうど半分です。

ららぽーと、三井アウトレットパーク——週末に家族でよく行く大型商業施設です。そこの警備員の相当数が、ヒトトヒトグループのスタッフです。この関係が始まったのは2000年。25年以上の付き合いです。

なぜこれが重要か。三井不動産は今後も全国で商業施設を増やし続けます。新しい施設ができるたびに、警備業務の新規案件が自動的に入ってくる可能性がある。しかも「25年付き合いのあるパートナー」として、競合他社より有利な立場で入れる。

ここまでを読んで、あなたはどう思いましたか?「地味な会社だと思っていたら、実はすごい会社だった」——そう感じていただけたなら、正しい読み方ができています。

でも、この会社の決算書にはもう一つの顔があります。「この会社が今、何と戦っているのか」「投資家として、就職先として、この会社をどう評価すべきか」——その答えが、有料部分に書いてあります。

特に、この会社のバランスシートに横たわる「59億円の爆弾」の話は、知らずに投資すると後悔するかもしれない話です。

「良い会社」と「買っていい株」は別の話です。この先に、「この会社の3つのリスクと、それでも面白い理由」を書きました。

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