gumi 2026年4月期 決算分析|『ジョジョ』を作る会社が、いつのまにか「XRPで稼ぐ会社」になっていた
経常利益2,170百万円のうち、本業の営業利益はわずか83百万円。残りは暗号資産の評価益だった。『オラドラ』を手がけるgumiが、SBIグループのもとでXRP最大保有・運用事業者へと舵を切る決算を読み解く。
この記事の3つの学び
- 経常利益2,170百万円の内訳を分解すると、本業の営業利益はわずか83百万円で、残り約2,000百万円は暗号資産の評価益(2,632百万円)によるものだった
- モバイルゲーム事業は売上が8.6%増加しながら469百万円の営業赤字となった一方、ブロックチェーン等事業は減収ながら552百万円の営業利益を出し、全社の黒字を支えている
- 会社は2027年4月期からXRP最大保有・運用事業者を目指す方針を掲げ、複数の暗号資産の分散保有から原則XRP一本への集約を進めている
はじめに——この会社は、もう「ゲーム会社」ではないかもしれない
gumi。『ジョジョの奇妙な冒険 オラオラオーバードライブ』を配信し、『僕のヒーローアカデミア』のゲーム化を控える、名の知れたモバイルゲーム会社だ。
その2026年4月期の通期決算を開いて、最初に目に飛び込んでくる数字はこうだ。 売上高9,183百万円(前期比プラス2.7%)。 経常利益2,170百万円(同プラス3.2%)。 会社自身の言葉を借りれば「各段階利益で黒字を達成」した、堅実な決算に見える。
だが、その隣にもう一つの数字が並んでいる。
営業利益、83百万円。
経常利益2,170百万円のうち、本業で稼いだのは83百万円。残りの約2,000百万円は、どこから来たのか。
答えを言う。暗号資産の値上がり益だ。この期の暗号資産評価益は2,632百万円。営業利益の実に30倍を超える。
つまりこの決算は、ゲームが稼いだのではない。gumiが抱え込んだビットコインとXRPが、勝手に値上がりして生んだ利益で黒字になっている。
『ジョジョ』を作る会社の決算を読んでいたはずが、いつのまにか暗号資産ファンドの運用報告書を読まされている。この違和感の正体を、数字で解剖する。
第一章——本業は赤字。黒字を作ったのは「保有資産の値上がり」
まず、この会社が何で稼いでいるのかを整理する。
gumiの事業は二つある。 一つはモバイルゲーム事業。『オラドラ』を筆頭に、スマホゲームを開発・運営して課金売上を得る。 もう一つがブロックチェーン等事業。暗号資産の保有・運用と、トークンを使った推し活プラットフォーム「OSHI3」などを手がける。
この二つを、営業利益で分けてみる。
モバイルゲーム事業は、売上7,006百万円(前期比プラス8.6パーセント)と伸びた。だが営業損益は469百万円の赤字だ。『オラドラ』のハーフアニバーサリーで広告を打ったが、売上が想定に届かず回収できなかった。ゲームは、売れているのに、儲かっていない。
一方のブロックチェーン等事業は、売上2,177百万円と減収ながら、営業利益552百万円を叩き出した。売上が減っているのに利益が出る。なぜか。エンタメ領域で受け取った暗号資産の売上計上と、コスト最適化が効いた。
この二つを合算すると、全社の営業利益は83百万円。ゲームの赤字を、暗号資産まわりの黒字がかろうじて埋めた形だ。
ここまでが「営業利益」の話。本業だけを見れば、この会社はほぼトントンだ。黒字とも赤字とも言い難い、水面ギリギリの水準にいる。
では2,170百万円の経常利益はどう作られたか。本業の下、営業外の段で、暗号資産評価益2,632百万円が一気に積み上がる。gumiが保有する暗号資産は、期末で141億円規模。前年から86.4パーセント増えた。この山が値上がりした分を、利益として計上している。
一文で言えば、gumiは「ゲームで稼ぐ会社」から「暗号資産を積み上げ、その値上がりで稼ぐ会社」へ変わりつつある。
第二章——ゲームの皮を被った、XRP集中投資会社
この決算のもう一つの読みどころは、会社が自ら宣言した「次の姿」にある。
gumiは2027年4月期から、事業セグメントの名前を変える。「モバイルゲーム事業」は「ネオメディアエンタメ事業」へ。「ブロックチェーン等事業」は「ネオクリプト事業」へ。単なる名称変更ではない。背後にいるのは、大株主であるSBIグループだ。
会社は明言している。日本におけるXRPの最大保有・運用事業者を目指す、と。これまで複数の暗号資産を分散保有していたのを、原則XRP一本に集約し、カバードコールというオプション取引で利回りを取りにいく。140億円規模の暗号資産を、XRPへ寄せていく方針だ。
会社が描く成長スパイラルはこうだ。ゲームやプラットフォームで暗号資産を稼ぐ。その暗号資産をXRPで運用し、値上がり益と利回りを得る。その運用益を、また新しいIP獲得へ再投資する。「実需(コンテンツ)」と「金融(保有・運用)」を回し続ける、という設計だ。
美しい絵に見える。だが、立ち止まって考えたい。
これは、ゲーム会社の決算なのか。それとも、ゲームという実需を入り口に暗号資産を積み上げる、資産運用会社の決算なのか。
日本で近い会社を探すなら、ビットコインをバランスシートに積み上げるあの上場企業——保有暗号資産の時価が企業価値を左右する、あの構造に似てくる。違うのは、gumiには「ゲームで暗号資産を受け取る」という実需の裏口があること。そしてSBIという金融の巨人が後ろに立っていることだ。
ここで、決算の「表の顔」は完成する。全段階黒字、増収、XRP戦略という明確な次の一手。
だが、暗号資産で作った利益には、ある決定的な性質がある。その性質を見た瞬間、この決算の印象は反転する。
会社が「黒字」と胸を張った2,170百万円は、本当にこの会社の手元に、現金として残っているのか。
有料パートでは、そこから解剖する。
一つ。キャッシュフロー計算書に隠された、この期に「現金がむしろ大きく減った」という事実。黒字なのに、なぜ財布は軽くなったのか。
二つ。株価低迷を理由に634万株分の新株予約権を消却した——この一手が、実は資金調達の綱渡りを露呈させている構造。
三つ。配当ゼロ、業績予想は非開示、中期計画は達成率47パーセントで未達。「黒字」の裏で会社が黙っている数字。
四つ。XRP一本化という賭けが、暗号資産の下落局面で何を引き起こすか。
そして最後に、投資家・ビジネスパーソンとして、この「ゲームと暗号資産のハイブリッド企業」をどう評価すればいいのか。判断の軸を渡す。
本サイトの内容は、企業分析および学習を目的とした情報提供であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。掲載情報の正確性・完全性を保証するものではありません。
次に読む
北海道のドラッグストアが「上場をやめる」決算|サツドラMBOを、40円の攻防から解剖する
直前株価835円に対し、社長は1,260円で自社株を買い戻すと宣言した。増収減益・中期経営計画の撤回・無配化と同時に発表されたMBO。ツルハとウエルシアの経営統合で23倍の体格差が生まれた業界地図から、非公開化の真の理由を読み解く。
GO株式会社 FY2026通期決算分析|純利益+341.8%の「派手な数字」に、なぜ騙されてはいけないのか
上場直後の初決算で純利益4.4倍を叩き出したGO。だがその押し上げの半分は繰延税金資産という一度きりの会計効果だった。タクシー配車アプリの決算書を、数字の内側から解剖する。
IonQ FY2026 Q1決算分析|四半期で「純利益1,250億円」を出した量子企業が、本業では現金を溶かし続けている
売上755%増、純利益1,250億円という華やかな数字の裏で、本業の調整後EBITDAはマイナス150億円。黒字の正体はワラントの時価評価だった。CEOが自ら設定した「Qデイ2028年」という締め切りと、現金燃焼の競走を読み解く。