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ペット愛が生んだ年商29億の怪物——犬猫生活IPO決算書を完全解剖する| SIGNAL深層レポート

従業員41人、工場なし、店舗なしで年商29億円。粗利率70.2%、定期購入比率95%という驚異の数字の裏にある「作らない・自分で売る・やめさせない・深くつながる」という4パーツ設計と、4年連続赤字だった理由、純資産に潜む「まやかしの33%」を解剖する。

この記事の3つの学び

  • 従業員41人・自社工場なしで年商29億円を達成し、粗利率70.2%(食品メーカー平均20〜40%の倍近い水準)は製造の完全外注とD2C直販(売上の91%)による中間マージン排除で実現している
  • 4年連続赤字(2021〜2024年)は失敗ではなく広告費への意図的な先行投資で、定期購入比率95%・会員数が1年半で36,272人から71,290人へ約2倍に増加し、ARR換算で約41億円の「毎年ほぼ確実に入ってくるお金」を積み上げている
  • 純資産3.6億円のうち1.2億円(33%)は繰延税金資産(将来の節税予定額)で現金ではなく、大株主の前澤ファンドが上場後も49.9%を保有し続けるなど、稼ぐ力の裏に財務面のリスクも抱えている

突然ですが、クイズです。

「ペットフードを売っている会社」と聞いて、あなたはどんな会社を想像しますか?大きな工場、大勢のスタッフ、全国の量販店に並ぶ商品……そんなイメージじゃないですか?

では、こんな会社があったらどう思いますか。従業員は41人。工場は持っていない。店舗もほぼない。売っているのはほぼ自社のウェブサイトだけ。それで年商29億円。しかも、売上の95%が「毎月自動で入ってくるお金」。

これが犬猫生活株式会社です。2026年3月、東京証券取引所への上場を申請した、今まさに旬の会社。この会社の決算書を読むと、「ビジネスで本当に大事なことって何か」がはっきり見えてきます。

まず「決算書」って何の書類なの?

決算書とは、「会社の通知表」です。大きく3枚のシートで構成されています。

損益計算書(P/L)▶ 「今年、いくら稼いだか」の通知表 貸借対照表(B/S)▶ 「今、財布の中にいくらあるか」の通知表 キャッシュフロー計算書(C/F)▶ 「現金が実際にどう動いたか」の通知表

この3枚を順番に読むと、会社の「本当の姿」が見えてきます。では、犬猫生活の決算書を一緒に開いてみましょう。

第1の謎:なぜ「赤字4年連続」の会社が上場できるのか

最初に見る数字は、こちらです。2021年4月期(創業3年目)▶ 赤字 △4,900万円。2022年4月期▶ 赤字 △2億9,100万円。2023年4月期▶ 赤字 △2億8,200万円。2024年4月期▶ 赤字 △4,300万円。

4年連続赤字。普通の会社なら倒産寸前のように聞こえます。でも、売上の推移も一緒に見てください。2021年4月期 ▶ 1億8,000万円。2022年4月期 ▶ 4億4,000万円。2023年4月期 ▶ 11億5,000万円。2024年4月期 ▶ 17億9,000万円。2025年4月期 ▶ 29億円。

「売上は毎年急増しているのに、赤字だった」——これは失敗ではなく、意図的な戦略です。お金を全部「広告費」に突っ込んで、お客さんを集めることだけに集中していたんです。赤字は「投資」であって、「損」ではない。

第2の謎:粗利率70%って、どれだけすごいのか

売上高29億円、売上原価8.7億円、売上総利益(粗利)20.4億円、粗利率70.2%。

食品メーカー(一般的)の粗利率は20〜40%、スーパーマーケットは25〜30%。犬猫生活は70.2%。「100円の商品を売ったとき、70円が手元に残る」ということです。

なぜこんなに粗利率が高いのか。製造は全部、外の工場に任せている。自社では作らないから、工場代も設備代もゼロ。しかも、プレミアム価格で売っているから、売値が高い。「作らない、店を持たない、でも高く売る」——この設計が、異次元の粗利率を生み出しています。

第3の謎:でも利益が出なかったのはなぜ?

粗利が20.4億円もあるのに、なぜ長年赤字だったのか。答えは販売管理費、特に「広告費」です。

FY2025の販売管理費の内訳は、広告宣伝費10.2億円(売上の35%)、荷造運賃2.1億円(売上の7%)、人件費1.8億円(売上の6%)、その他2.3億円。合計16.4億円が費用として消えます。

粗利20.4億円 − 販管費16.4億円 = 営業利益0.9億円。やっと黒字になりました。

少し前の年(FY2024)は、広告費が6.6億円で、売上が17.9億円。粗利12.4億円 − 販管費12.7億円 = 営業損失△0.4億円。「新規のお客さんを集めるための広告費 > その年の利益」だったんです。これはAmazonや楽天が創業期にやったことと全く同じ。「今は赤字でも、お客さんを獲得し続ければ、あとで回収できる」という賭けです。犬猫生活はその賭けに勝ちつつあります。

この会社、どうやってお金を稼いでいるのか

犬猫生活のビジネスモデルは、4つのパーツが噛み合って動いています。

パーツ①「作らない」——製造は100%外注。犬猫生活は工場を一切持っていません。石川県や広島県などの専門工場に製造を委託しています。「工場を持つ=固定費が増える=売上が落ちたときに一気に赤字になる」リスクを完全に回避しているんです。

パーツ②「自分で売る」——D2Cモデルという選択。売上の91%が「自社のウェブサイトから直接お客さんへ」。間にお店を挟まないメリットは、中間マージンがゼロになる、お客さんのデータが全部自分のものになる、値引き競争に巻き込まれない、の3つです。

パーツ③「やめさせない」——サブスクという設計。人間は「飽きる」生き物ですが、犬と猫は「気に入ったものを食べ続ける」のが基本的な習性です。「一度気に入ってもらえれば、解約理由が生まれにくい」。これが、定期購入比率95%という他のD2C企業では考えられない数字の正体です。

パーツ④「深くつながる」——動物病院・トリミングサロンという次の一手。2024年からM&Aでトリミングサロン3店舗、2025年に動物病院1店舗を取得しました。顧客との接触面積を増やすことで、「犬猫生活というブランドの重力圏」に入ってもらう設計です。

この4つのパーツを並べると、全体の構造が見えます。作らない(製造外注)▶ 粗利率を最大化。自分で売る(D2C)▶ 顧客データと高利益を両立。やめさせない(サブスク)▶ 毎月安定収入を積み上げ。深くつながる(病院・サロン)▶ 解約率を構造的に下げる。

第4の謎:「毎月自動で入ってくるお金」の正体

売上の95%が「定期購入(サブスクリプション)」。定期会員数の推移を見ると、すごさがよりわかります。

FY7 Q1(2024年7月)▶ 36,272人。FY7 Q4(2025年4月)▶ 56,824人。FY8 Q3(2026年1月)▶ 71,290人。1年半で約2倍に増えています。

そして、1人あたりの月間購入額(ARPU)は約4,800円で安定。71,290人 × 月4,800円 = 月収入 約3.4億円。年換算すると約41億円。これが「毎年ほぼ確実に入ってくるお金の量」です。

ここで一度立ち止まって聞かせてください。「粗利70%の秘密はわかった。定期会員が7万人いることもわかった。でも……この会社、本当に買っていいの?」

実は、決算書にはもう一つの顔があります。損益計算書には「稼ぐ力」が書いてある。でも貸借対照表とキャッシュフロー計算書には「危うさ」が書いてある。

有料パートでは、犬猫生活の決算書が隠している「3つの時限爆弾」と、それでも「今が買い時かもしれない理由」を、同じように噛み砕いて解説します。

具体的には、こんな話をします。純資産3.6億円の「33%がまやかし」という話(繰延税金資産の正体)。現金2.4億円しか持っていない会社が、月10億円の広告を打てる理由。前澤ファンドが49.9%を握ったまま上場する「本当のリスク」。営業利益が3%→12%に急回復した「真の理由」と、それが続かないシナリオ。「広告費35%依存」が崩れる瞬間の見分け方。

決算書は「過去の記録」ではありません。「会社の未来を予測するための地図」です。地図の後半部分、一緒に読みますか?

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