スタジオアリス FY2027 Q1決算分析|「子供が減る国」で減収した写真館最大手が、実は本業で"増益"していた理由
売上マイナス3.8%、純利益マイナス29%という「衰退企業」に見える決算の裏で、営業利益はプラス8.5%、写真事業のセグメント利益はプラス23.5%だった。減収増益の仕掛けと「純利益マイナス29%」という見出しの錯覚を解剖する。
この記事の3つの学び
- 売上は前年同期比3.8%減った一方、営業利益は8.5%増、写真事業のセグメント利益は23.5%増と、本業の利益率はむしろ改善している
- 衣装を中国子会社で内製する体制が原価率を80.6%から79.6%へ改善させ、売上を追わず利益率を取りにいく「設計された減収増益」を実現している
- この会社の売上は7〜9割が11月の七五三シーズンに集中し、第1四半期は年間営業利益予想のまだ1割程度しか計上されない「閑散期」の数字である
はじめに——
子供の数が減り続ける国がある。日本だ。 その国で、子供写真館の最大手が決算を出した。 株式会社スタジオアリス。2027年2月期第1四半期。
売上高75億円、前年同期比マイナス3.8%。 純利益1.11億円、前年同期比マイナス29.0%。
数字の表面は、暗い。 減収。そして最終利益がほぼ3割減。 「少子化に飲まれる古いビジネス」——そう読んで、ページを閉じたくなる。
だが、同じ決算書の中に、真逆の数字がある。 営業利益は2.29億円、前年同期比プラス8.5%。 写真事業のセグメント利益にいたっては、プラス23.5%だ。
減収なのに、本業の利益は増えている。 なのに、最終利益は3割減っている。
この3つの数字は、普通なら同時に成立しない。 どこかに「仕掛け」がある。 その仕掛けの正体を、今日は数字から解体する。
第一章——七五三に賭ける会社の「稼ぎ方」
まず、この会社が何で稼いでいるかを掴む。
スタジオアリスは、こども写真館を全国に展開している。 第1四半期末の店舗数は406店舗。うち直営が397店、フランチャイズが9店だ。 七五三、お宮参り、入園入学、成人式。 人生の節目に、家族が写真を撮りにくる。
収益の柱は二つ。 一つは撮影そのもの。 もう一つは、撮った写真をプリントやアルバムにして売る「商品」だ。 撮影料を抑え、商品で稼ぐ。これがこの会社のモデルの骨格だ。
ここで、絶対に外せない事実がある。 この会社の売上は、11月に集中する。 七五三だ。
会社自身が短信にこう書いている。売上は11月前後の七五三の時期に集中し、下半期に偏重している、と。 だから上半期の業績予測は「極めて困難」とし、第2四半期の予想すら公表していない。
つまり、今回の第1四半期(3月〜5月)は、この会社にとって「閑散期」だ。 通期の営業利益予想24.5億円に対して、第1四半期の営業利益は2.29億円。 一年の稼ぎの、まだ1割も出ていない。
減収3.8%という数字も、この文脈で読む必要がある。 少子化は確かに逆風だ。物価高による選別購買も効いている。 だが、勝負は下半期にある。上半期の減収だけで「衰退」と断じるのは早い。
第二章——減収なのに、なぜ本業は太ったのか
ここからが、この決算の面白いところだ。
売上は3.8%減った。 なのに営業利益は8.5%増えた。 この逆転は、どこから来たのか。
答えは、売上原価にある。
前年同期の売上原価は63.2億円だった。 今期は60.1億円。3.1億円減っている。 売上の減少幅(3億円弱)を上回るペースで、原価が下がった。
原価率で見ると、前年の80.6%が、今期は79.6%へ。 わずか1ポイントの改善に見える。 だが、売上75億円規模の会社にとって、1ポイントは営業利益を丸ごと動かす。
なぜ原価が下がったのか。 ヒントは、この会社が衣装を「自分で作っている」ことにある。 連結子会社の京都豊匠、その子会社である上海豊匠服飾。 中国の自社工場で、店頭に並ぶ着物や衣装を内製している。
原材料価格が高騰する中で、この内製ラインが「コスト最適化」に効いた。 外から仕入れる会社なら、値上げをそのまま被る。 自分で作る会社は、原価を自分でコントロールできる。
写真事業のセグメント利益がプラス23.5%まで伸びたのは、この構造の結果だ。 売上を追うのをやめ、利益率を取りにいった。 減収増益は、事故ではない。設計だ。
ここまでで、二つの謎は解けた。 減収の理由(少子化・閑散期)。 本業が増益した理由(原価改善・衣装内製)。
だが、最大の謎が残っている。
営業利益も経常利益も増えたのに、なぜ最終利益だけが29%も減ったのか。
この答えは、損益計算書のいちばん下、多くの投資家が読み飛ばす一行に隠されている。 そこを読むと、「純利益マイナス29%」という見出しが、いかに人を錯覚させるかがわかる。
その一行の正体。 現金182億円・自己資本比率76.6%という「異常な財務」が意味する堀とリスク。 少子化という逆風を、この会社が数字でどう跳ね返そうとしているか。 そして、投資家として今この株をどう扱うか。
続きで、決算書の「裏側」を解剖する。
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