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タマホーム 2026年5月期決算分析|「家を売る会社」が、家で赤字を出した

主力の住宅事業が10.7億円の営業赤字に転落し、会社全体の黒字を不動産事業がかろうじて支えている。値上げすれば客が逃げ、値上げしなければ利益が消える——ローコスト住宅という業態がコスト高の時代に直面した構造的な罠を解剖する。

この記事の3つの学び

  • 主力の住宅事業は前期3.3億円の黒字から今期10.7億円の営業赤字に転落し、代わって不動産事業(営業利益35.8億円、前期比48.1%増)が会社全体の黒字をほぼ丸ごと支える構造になっている
  • 注文住宅の引渡棟数は3年前の7,729棟から今期5,176棟へ減少する一方、資材費・人件費上昇を受けた値上げで単価は維持しており、「値上げで単価を守れば棟数が逃げる」というローコスト業態特有の板挟みに陥っている
  • 234ヶ所の営業拠点という固定費が売上の減少に対して動かないため、棟数減がそのまま営業赤字に直結する構造的な問題であり、景気循環ではなくコスト高時代への構造対応が問われている

はじめに

タマホームという会社を知らない人は、たぶんいない。

「ハッピーライフ、ハッピーホーム」。 テレビをつければCMが流れ、ローコストの注文住宅といえば、この会社の名前が出てくる。

その会社が、2026年5月期の決算を出した。 売上高1,977億円、前期比1.5%減。 営業利益38億円、6.6%減。 純利益12億円、17.9%減。

数字だけ見れば「まあ、住宅不況だし、こんなものか」で終わる決算だ。 市場もそう受け止めた。

だが、セグメントの中身を開いた瞬間、私は手が止まった。

主力の住宅事業が、営業赤字だった。 前期は3.3億円の黒字。それが今期、10.7億円の損失に転落している。

家を売る会社が、家で赤字を出した。

そして会社全体を黒字に踏みとどまらせているのは、不動産事業だ。

「注文住宅のタマホーム」という看板と、実際に金を稼いでいる事業が、静かにズレ始めている。 この決算の本当のテーマは、そこにある。

第一章——稼ぎ頭が、入れ替わった

まず、この会社の稼ぎ方を確認する。

タマホームは、家を一棟建てて引き渡すたびに代金を受け取る、請負の会社だ。 柱は四つある。 注文住宅を中心とする住宅事業、戸建分譲やオフィスを扱う不動産事業、住宅ローンや保険の金融事業、メガソーラーのエネルギー事業。

長らく、この会社の大黒柱は住宅事業だった。 2023年5月期、住宅事業は89億円の営業利益を稼いでいた。 それが2025年5月期に3.3億円まで縮み、今期ついにマイナスへ沈んだ。

代わりに前に出てきたのが、不動産事業だ。 今期の不動産事業の営業利益は35.8億円、前期比48.1%増。 会社全体の営業利益38億円の、ほぼ全額をこの事業が叩き出している。

つまり今のタマホームは、「注文住宅で稼ぐ会社」ではない。 「オフィスの区分所有権や分譲住宅を売って、注文住宅の赤字を埋めている会社」だ。

看板とエンジンが、入れ替わった。 この事実を、まず頭に入れてほしい。

第二章——「安さ」という勝ちパターンが、罠に変わる瞬間

なぜ、主力事業が赤字に落ちたのか。

表面的な理由は単純だ。棟数が減った。 今期の注文住宅の引渡は5,176棟、前期比7.5%減。 3年前は7,729棟あった。二年で三分の一近くが消えた計算になる。

だが、これだけなら「不況で客が減った」で説明がつく。 問題はその先にある。

一棟あたりの販売価格は、下がっていない。むしろ高い水準を保っている。 資材費と人件費が上がり続けたぶん、タマホームも値上げをしてきたからだ。

ここに、ローコスト住宅という業態の急所が隠れている。

考えてみてほしい。 この会社の顧客は、そもそも「安いから」タマホームを選んできた層だ。 その会社が値上げをすれば、顧客はどう動くか。 より安い競合へ流れるか、家を建てること自体を先送りにする。

値上げで単価は守れる。 だが、単価を守った瞬間に、棟数が逃げていく。

一方で、234ヶ所ある営業拠点の家賃も、そこで働く人の給料も、簡単には減らせない。 売上という分子が縮んでも、固定費という分母は動かない。 だから利益が消える。

これは景気の問題ではない。 「安さ」を武器にしてきた会社が、コスト高の時代に入った瞬間に必ず直面する、構造の問題だ。

同じ住宅業界でも、積水ハウスや大和ハウスは、売上規模がタマホームの二十倍以上ある巨人だ。 彼らは高価格帯の顧客を抱え、値上げを受け入れてもらえる。 タマホームはその逆側、価格で戦うチャレンジャーの位置にいる。 この立ち位置が、いま牙をむいている。

そして——ここまでは、決算資料をていねいに読めば誰でもたどり着く「表の顔」にすぎない。

私が本当に薄気味悪さを感じたのは、この会社の財務とキャッシュ、そして配当のページを開いたときだ。

12億円しか稼いでいないこの会社は、今期いくらの配当を株主に払ったか。 そして、手元の現金は一年でいくら減ったか。 その二つの数字を並べたとき、「V字回復」という威勢のいい来期計画の意味が、まったく違って見えてくる。

さらに、経営陣が自ら出した下方修正の計画すら、この会社は達成できていない。 にもかかわらず、翌期は営業利益を倍にすると宣言している。 この矛盾を、どう読むか。

配当と現金と借金。この三つを重ねたとき見えてくる、タマホームが賭けに出ざるを得ない理由を、解剖する。

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